元中の人の観点で、ファンマネの仕事について書いてみます。
ファンドマネージャーの仕事
ファンドマネージャー(海外では、ポートフォリオマネージャー)の仕事は、お客様から預かった資産を、責任を持って株などで運用する責任者です。
アナリストとの違いは、通常、分析までで終わるか、投資の意志決定の責任を負うかの違いで考えるとわかりやすい。
ファンマネなどの職業投資家と一般投資家の違い
再現性を求められること
ファンドマネージャーと一般投資家との違いで最も大きいと感じるのは、信用を求められるということだと思います。
どちらが優れているとかではなく、ファンマネはお金を預かるので、勝てることをお客様に納得させなければなりません。
そこで一つの方法はスタイルを狭めること。
株のプロなのか、債券のプロなのか。
為替も日経先物も、個別株も債券も全部やって勝ちますという手段は普通取れません。
株のファンマネなら、そこからさらにスタイルを狭めて、例えば、グロース投資のファンマネ、小型株のファンマネ、バリュー株のファンマネなど一貫した投資スタイルを提示します。
さらに、グロース株なら、世の中の流れの変化から生まれるグロースを取るのか、それとも個別のイノベーションを取るのか。
バリュエーションはどれくらい気にするのかといった独自の付加価値源泉を定義します。
一般的に、これらを投資哲学と呼んでいます。
職業投資家、いわゆるプロは、何のプロかを明確にし、そこで勝てるやり方、道筋を確立していることが求められます。
一般投資家の強み
一般投資家の強みは、スタイルにとらわれないことです。
例えば、バリュー投資のプロは、米株においては過去10年以上インデックスに負けた人が大半となっています。
長期グロース相場だからです。
一般投資家は凝り固まったスタイルに固執することなく、柔軟に市場で戦うことができます。
プロの場合、最初からバリューもグロースも両方やりますと宣言していればいいですが、グロースで長期投資を掲げていたファンドが、急に短期のカタリストがあるバリュー株が云々などと言い出せば、お客さんは離れてしまいます。
ファンマネにも旬がある
ファンマネはスタイルを狭めることで説得力を持たせ、お客さまに信頼してもらっている部分があると書きました。これは裏返すとファンマネにも旬があるということです。
以下は米国市場の話です。
例えば、2000年のITバブルでは、ハイテクグロース株にありえない高値が付けられていました。これが崩壊し、IT関連の高値を付けすぎるのは怖いな、とみんなが思っていたのかわからないですが、2013年くらいまでは、画期的な企業でも割安に見える株もありました。
このころは、割安性を意識したグロース投資(GARPなど)が奏功していたように思います。
またリーマンショック後、中国など新興国がテーマになり、コモディティ、資本財関連の株が上昇するなどバリュー株も奮闘していました。
市場が少し変わってきたなと感じたのは2017年以降です。
バリュエーションをあまり気にしないお金が大量に入ってきたなと感じます。
イノベーティブな会社を素直に評価する相場です。
バリュエーションに対する考えが変わったともいえるでしょう。
GAFAがその象徴で、GAFAを入れていないと勝てないし、GAFAだけ入れておけば、ほとんどのプロに勝てた相場です。
このような相場ではテーマ株ファンドや、ストーリーテラー的なグロースファンドマネージャーが大勝し、バリュエーションうんたらとか言っているファンドマネージャーは厳しい。
これはコロナが起きた足元さらに加速しているように見えます。
ITバブルの再来のようにも見えます。
このようにバリューとグロース、グロースの中でもハイパーグロース、割安グロースなどを行き来することで、ファンマネが淘汰されます。
お客様は、任せるファンマネのスタイルを分散させることで、相場の荒波を乗り越えていきます。
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