今回は、遺伝子検査業界のアマゾンとも称されるInvitae(インビテ)について分析します。
最近は、株価が堅調なことや、有名ETFに組み入れられていることもあり、注目度が上がっています。
どんな会社か?
この会社の中核事業は臨床検査で、いわゆる検査会社です。
いわゆるラボと呼ばれる業態で、米国ではQuest diagnosticsやLabcorpが業界のトッププレイヤーです。
ビジネスの流れは、病院→検査会社であり、顧客(請求先)は医師です。
患者さんの唾液や血液を病院で採取し、診断のために検査会社に送るというのがビジネスモデル。

ここまでは、普通の検査会社と変わらない。
何が違うのか書いていきますね。
Invitaeが従来の会社と異なる点。なぜ検査業界のアマゾンなのか?
以下のトピックについて少し掘り下げていきます。
- 遺伝子検査だけに特化し、アマゾンのようなビジネスモデルを構築
- 23&meとはビジネスモデルの設計がやや異なる
- 先天的な遺伝子変異から後天的な遺伝子変異(がん)にも進出
- 足元の赤字について
遺伝子検査だけに特化し、アマゾンのようなビジネスモデルを構築
同社の特徴はビジネスモデルにあります。
まず成長が見込まれる遺伝子検査の領域のみに特化。
上述のQuestやLabcorpなどは幅広い検査を担っているのが、大きな違い。
そこで、アマゾンのようなビジネスモデルを導入し、シェアを急激に伸ばしています。
なぜそれが出来たか。
まず、この領域で勝つためにはどうしたらいいか考えました。
上に記載したQuest やLabcorpは業界の大手で、近年伸びてきた遺伝子検査においても高いプレゼンスを持っていました。
しかし、どちらかというとレガシーな商慣習が蔓延しており、Invitaeはそこを突いたわけです。
その商慣習とは、粗利益率を80%といった高いレベルで設定することです。
遺伝子検査市場がニッチなままでとどまるならば、それは普通の勝ちパターンでしょう。
ただ、Invitaeはこの分野がコモディティ化し、大きな市場になると見込み、粗利益率を下げ、価格を大きく下げました。
そこで参考にしたのが、アマゾンのモデル。
創業者の一人のSean氏が構築を主導したようです。
具体的にはイーコマースの様なプラットフォームから医師が注文できるようにすること、オートメーションの導入(解析部分など)、最先端のDNAシーケンサーの大量配置。
これらにより規模の経済が効くインフラを整えたということです。
ASP(平均販売価格)は400ドルあたり。
この結果、保険適応がまだされていない検査に関しても患者が自腹で払ってもいいレベルに値段が下がり、遺伝子検査が普及していきます。
ボリュームを十分に大きくすることができれば、黒字化するというのが会社の見込みです。
23&meとはビジネスモデルの設計がやや異なる
同じようなディスラプティブな検査会社として23&Meが有名です。
ただ両社には大きな違いがあります。
まず共通点としては、値段の安さと、イーコマースのようなインターフェースを備えていること。
違いとしては、23&Meが医療以外の分野にも展開している点。
たとえば先祖はどのような人種かなどのテストですね。
一方、Invitaeは医療分野のみに特化しています。
そのため、原則医師を通して注文、結果の説明に医師が関わります。

今後大きな発展が見込まれるのは、疾患と遺伝子に注目した分野であると思いますので、この会社の選択は正しいような気がします。
また、遺伝子情報を医療情報としっかりと紐づけることを狙っています。
このデータを使い、将来様々なビジネスに展開させることを同社は考えているようです。
先天的な遺伝子変異から後天的な遺伝子変異(がん)にも進出
2020年に、同社はIPO間近だったArcher社の買収を発表し、株価は急騰しました。
通常買収を発表した会社の株価がここまで急騰するのは珍しいです。

おそらく、買収を行ったことで、リキッドバイオプシー関連と見なされ、テーマ系ファンドの買いが入ったのでしょう。
Archer社はリキッドバイオプシーにより、がんの適切な治療のために重要な遺伝子情報を検査する技術(いわゆるコンパニオン診断、Therapy selectionとも)などを開発しています。
この買収により、同社の事業は先天的な遺伝子変異から、後天的な遺伝子変異の分野にも広がりました。
以下の記事で、Archer社も狙っているTherapy selectionの市場規模について少し触れています。
希少疾患などは先天的な遺伝子変異により起こり、がんなどは後天的な遺伝子変異によって起こります(厳密に言うと先天的な遺伝子要因によっても、がん発生は促進されますが、生活習慣による遺伝子変異の蓄積でがんが起こりやすいということです)。
足元の赤字について
足元は、赤字状態となっています。
これはビジネスモデル上しょうがない(薄利多売)ですが、黒字化のカギと考えられるのはボリュームと保険適応です。
アマゾンのようなビジネスモデルなので、ボリュームが大事。後者に関しては、同社はまだ保険適応になっていないテストが多くあり、それがASP(平均販売単価)を落とす要因になっています。
毎年、キャッシュバーン(現金流出)が続いており、それを増資で賄っています。
やや注意が必要だと個人的に考えているのは、2021年度で、Archer社の赤字額がどれくらいかわからないのですが、乗ってくると見られる点。
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