クアンテリックス(QTRX) の銘柄分析【Quanterix】

Quanterix(クアンテリックス、以下QTRX)の分析です。

超高感度のタンパク質分析機器製造会社です。

2018年上場。

2014年時点ではほぼ売上ゼロの状況から、2019年には57Mの売上を計上するまでになっています。

書いている時点では時価総額2000億程度で、新興企業的な位置づけ。

目次

興味を持った理由

プロテオームという研究分野が引き続き重要であると考えられるなかで、その研究を推進するために必要な、画期的なデバイスを作っている点です。

プロテオームとは、ある細胞に含まれるたんぱく質すべてをさす言葉です。

現在NGSの進歩により、遺伝子の情報を使い、診断などダウンストリームに巨大なエコシステムが形成されつつあります。

一方で、タンパク質はNGSほど精緻に調べる方法がないため、そのような巨大なエコシステムは形成されていません。

そのため、もし画期的なデバイスがあれば、非常に有望であると感じました。

以下は同社10Kからの引用です。

 The human body contains approximately 20,000 genes. One of the core functions of genes, which are comprised of DNA, is to regulate protein production—which ones are produced, the volume of each, and for how long—influenced by both biological and environmental factors. These 20,000 genes help govern the expression of over 100,000 proteins, approximately 10,500 of which are known to be secreted in blood, and fewer than 1,300 of which can be consistently detected in healthy individuals using conventional immunoassay technologies. Accordingly, the study of much of the proteome has not been practical given the limited level of sensitivity of existing technologies. To date, across our platforms, we have developed assays that address approximately 145 protein biomarkers secreted or released in blood and CSF.

同社10Kより

超高感度のタンパク質分析

同社が提供するのは、タンパク質を検出する機器で、Simoaテクノロジーと呼ばれています。

このテクノロジー自体は、イルミナの共同創業者のタフツ大学のDavid walt氏により開発されたものです。

従来の手法よりも1000倍以上といったレベルの高い感度で狙ったタンパク質を検出可能。

従来タンパク質を検出するために使用されていたのはELISAという手法。

これは、検出したいタンパク質を標的とし、それに結合する抗体を使用した手法です。

標識と抗体をセットにすることで、検出したいタンパク質があれば、検出、反応強度からある程度、定量化することができる手法です。

同社の技術もELISAと原理は同じですが、微細化の技術により、精度を大幅に上げています。

原理

従来の、ELISA法は96個の穴を配置したプレートに試薬をセットし、目的のタンパク質の検出します。

同社のテクノロジーは200000個の微小な穴がプレート上に設置してあります。

一つの穴に、抗原とくっついた抗体が一つしか入らないようになっています。

そこで標識のための酵素反応が起きる仕組みになっています。

ELISA法が25Mプールの中で、不純物を探すようなものであるとすると、同社のSimoaでは、雨水の水滴の中から不純物を探すようなものです。

そのため検出強度が非常に高くなるようです。

診断の分野で使われれば、ゲームチェンジ

アカデミックの分野だけではなく、診断の分野で使われれば大きなアップサイドが見込めます。

現時点で、同社は五つの市場に焦点を当てています。

従来のELISAでは不十分だった検出感度が大幅に引きあがるので、同社は参入が可能であると考えているようです。

そのうち、二つを記載します。

アルツハイマー

アルツハイマーの診断にはMRIなどに加え、脳髄液内の異常たんぱくの存在が調べられます。

血液脳関門の存在により、血液まで異常たんぱくはあまり流れてきませんが、ごく微量に存在することがわかっています。

高感度でタンパク質を検出できる技術であれば、脳脊髄液を取らなくても血液を調べることで、より低侵襲に診断を行える可能性があります。

同社のデバイスは、マルチプレックス解析(複数のターゲット)が可能で、しかも精度が落ちないという特徴があります。

そのため、タウタンパクを見るとしても、タウのサブタイプを複数同時に調べることでさらに精度を上げれると見ているようです。

例えば、アルツハイマーの分野ではLillyがフェーズ2で良好な結果を得たとして、QTRXの株価も上がっていました。

同社の説明によると、同社のデバイスはP-Tau217や181、NFLなど主要なバイオマーカーを精緻に調べることができます。

これにより、治験の参加者をより適切に選別することができるため、治験の確度を高めることができると考えているようです(Recruitment & Stratifying of patient)。

例えば、以下のように、pTau181は、アルツハイマーへの特異度が高く、frontotemproal dementia(前頭側頭型認知症)と見分けるのに重要です。

here’s some pretty key things that have gone on here, Simoa pTau-181 has been shown to be highly specific for Alzheimer’s and allowing cohorts to be enriched in to eliminate frontotemporal dementia as well serum Nf-L levels have been able to reveal 16 years before dementia in familial patients.

同社決算説明会より

特定の治験で、対象の疾患以外の患者が含まれていると有意差を出すのが難しくなると考えられます。

これらは、Lillyに限らず、Biogenやその他のアルツハイマー分野で創薬を目指す会社全体の話です。

どれか一つでも上市された場合、同社のデバイスが診断に使われる可能性が非常に高いと考えられます。

がんの領域での展開も目指しています。

リキッドバイオプシーによるがんの診断は、Grailなどに見られるようにNGSを使った方法が試されています。

一方、同社のテクノロジーによっても、可能であると同社は考えています。

現在、乳がんでマンモグラフ。また、前立線がんでPSAなど抗体抗原反応を利用した診断方法が確立されていますが、実験レベルであるものの、同社のテクノロジーがこれらを置き換えることができることをサポートするデータが得られているようです。

創薬の分野でのマーカー検出に有望

もう一つ、今後の有望市場としては、創薬の分野が挙げられます。

創薬においては、単に最終的な症状の改善のみならず、体内で薬がどのように作用しているかをつかむことが求められています。

その方法として、体内の特定のタンパク質の動向をモニタリングします。

この特定のタンパク質のことをバイオマーカーと呼んでいます。

同社の高感度テクノロジーを使えば、新しいバイオマーカーの探索や、これまで難しかった血液からマーカーを検出することができる可能性があります。

会社ターゲットTAM

2021/1 JPMカンファレンスより

COVID向けに関しては、2021/1にCOVID向けテストがEUAを取得しました。

診断で13Bの市場があり、後遺症などのリサーチなどで、リサーチマーケットも0.7B程度の市場があるとみられています。

NeurologyとImmuology & oncologyに関しては、現在はリサーチマーケットのみの展開です。

診断に市場に行ければ、リサーチ市場も伸びるという相互作用でTAMが拡大するとみているようです。

質量分析計と何が違うのか

アルツハイマーの診断などは、島津製作所なども取り組んでいます。

島津製作所などが手掛ける、質量分析計は微量のタンパク質などを検出できる機器です。

QTRXの10Kによると、質量分析計が血液中で検出可能なタンパク質は限定されるとのこと。

以下、質量分析計の欠点として、同社が指摘している点を引用します。

narrow dynamic range (i.e., the range of concentration of proteins being detected), that may require sample dilution, diluting molecules and increasing sample volume requiring additional enzymes to reach detection limit;

同社10Kより

ここで説明されているDynamic rangeとは、血漿中のタンパク質の濃度のばらつきのことです。

 現在の MS で同定できるタンパク質濃度のダイナミックレンジはせいぜい 10^3 ~ 10^4 程度であり,血液中に含まれるタンパク質濃度のダイナミックレンジ 10^11 にははるかに及ばない。

https://www.jhupo.org/data/proteomeletters/16001.pdf

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