SaaS系企業の決算を見ると聞きなれない言葉がたくさん出てきます。
今回は、トップライン指標(ARR, MRR, ACV,売上との違い)、ビジネス健全性指標(LTV, CAC)について解説します。
トップライン指標
トップラインとは売上のようなもので、財務諸表の一番上に来ることからトップラインと呼ばれています。
SaaSに代表される米ソフトウェア企業のトップラインを見るうえでは、売上よりもARR、MRR、ACVという指標が使われています。
以下が定義です。
- MRR : Monthly recurring revenueの略。サブスクのような繰り返し発生する月間売上。
- ARR : Annual recurring revenueの略。MRRを年度ベースにしたもの。
- ACV : Annual contract valueの略。長期にわたる契約高を年間ベースにしたもの。

実際の計上の流れを見るために、架空のモデルで見てみます。
例:ある企業が5月にACV120万の契約を締結しました。その契約は8月にサービスが開始され、課金もスタートします。この場合、計上の流れを示したのが以下の図です。
契約発生 | サービス開始 | |||||
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | |
ACV | 0 | 120万 | 120万 | 120万 | 120万 | 120万 |
ARR | 0 | 0 | 0 | 0 | 120万 | 120万 |
MRR | 0 | 0 | 0 | 0 | 10万 | 10万 |
売上 | 0 | 0 | 0 | 0 | 10万 | 10万 |
※この会社は100%サブスク収入の会社と仮定します。その場合売上=MRRになります。

ARRやACVは売上の先行指標になるので有用ですね。
ビジネス健全性指標(LTV, CAC)
LTVやCACという指標を見ることで、その会社が同じビジネスモデルで拡大していくことで、黒字化方向に行っているのか、それともキャッシュを無駄にするだけなのかという判断の助けになります。
SaaS企業は赤字であることが多く、最初はトップラインの勢いを評価することになります。
しかし、トップラインが伸びが素晴らしくても、将来的に利益に結び付くかどうか評価する必要があります。
その時に有用な指標が、LTV/CACという指標です。
これと顧客の伸びを結び付けることで、このまま顧客が増えていけば、いつか黒字化するという見通しを持つことができます。
LTVとCACの定義は以下です。
- LTV : Life time valueの略。顧客一人当たりが将来にわたってもたらす売上。
- CAC: Customer acquisition costの略。顧客一人当たりを獲得するコスト。
LTVをCACで割ったLTV/CACがプラスであれば、顧客が増えていけば収益性が改善。
逆にマイナスであれば、収益性が逆に悪化していくと考えられます。

LTV/CACを見ることで、ビジネスモデルの健全性を評価できるということですね。
では、LTVやCACをどうやって算出するか?
LTVやCACに関しては、会社に聞かない限り正確な数字は出せませんが、公表されている情報からある程度推測が可能です。
LTVの算出方法
LTV = ARR÷年間解約率÷顧客数
LTVはARR(年間サブスク売上)を年間解約率で割り、さらに顧客数で割ることで算出できます。
年間解約率はRetention rateの逆数です。
ARRやRetention rate、顧客数はほとんどの企業が開示しています。
年間解約率10%だとすると、顧客は平均的に10年使用することになります。
CACの算出方法
CAC= Sales & marketing 費用 / 新規顧客顧客増加数
CACに関しては、年間もしくは四半期あたりSales & marketingを年間もしくは四半期あたり新規顧客増加数で割ることで推定できると思います。
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