次世代医薬品:ゲノム編集をわかりやすく解説。Crisper-cas9とは?関連銘柄は?

ノーベル賞の受賞もあり、ゲノム編集による創薬に注目が集まっています。

今回はゲノム編集全般について。次回は、関連銘柄についてわかりやすく分析します。

目次

ゲノム編集(genome editing)とは?

ゲノム編集は、文字通り、遺伝子を編集することです。

遺伝子を編集することにより、病気を治す医薬品を作れる可能性があり、注目されています。

そもそも医薬品とは?ゲノム編集薬の位置づけ

医薬品とは、何らかのタンパク質に作用して病気を抑えたり、直す物質を指します。

その物質は、アスピリンのような低分子薬品、抗体医薬品のような高分子薬品があります。

これらは、タンパク質にくっつくことで、何らかの薬理活性を出すものです。

ではゲノム編集薬とは?

発想としては、タンパク質に影響を与えるという医薬品の定義内のものです。

タンパク質は設計図である遺伝子から体内で合成されます。

遺伝子に異常が起きた結果、必要なタンパク質が出来なかったり、変なタンパク質ができる病気はたくさんあります。

遺伝子を体内で編集できれば、このような病気を治すことができます。

ゲノム編集の技術を使えば、これまで治せなかった病気も治せる可能性が出てきます。

そのため、ゲノム編集は次世代のモダリティ(低分子、抗体医薬、ワクチンなど病気へのアクセス方法)として大きく期待されています。

ゲノム編集医薬品は何から構成される?

ゲノム編集医薬品とは具体的にどのようなものになるのでしょうか?

※現在米国などで認可されたゲノム編集薬はありません。

ちなみに頭痛薬のアスピリンは低分子薬というカテゴリーで、以下のような構造式になっています。

ではゲノム編集薬品はどのような構造なのでしょうか?

アスピリンと同じく、薬効物質が必要です。

加えて、それを届けるためのドラッグデリバリーシステムが必要になります。

まず薬の本体である薬効物質ですが、Crisper-Cas9という技術を土台にした物質があります。

Crisper-Cas9とは?

ゲノム編集薬の薬効物質(本体)は、狙った遺伝子に到達するためのガイド役と、狙った遺伝子を切断するハサミから構成されます。

これらはつながっており、物質としてはDNAのようなものです。

狙った遺伝子がハサミで切断された後は、体内のメカニズムにより、再度くっつきます

遺伝子上の異常な遺伝子配列を削除することで、正常な遺伝子配列に戻すことができれば、病気を治すことができます。

また、技術的にはさらに未成熟になりますが、異常な遺伝子配列を除去し、正常な遺伝子配列を導入することも可能のようです。

切断した後、周りに取り込むための配列を置いておけば、それが取り込まれるという現象を使っています。

しかし、これだけでは、薬にはなりません。

体内に物質をそのまま入れればすぐに分解されてしまいます

ドラッグデリバリーシステムが必要

上述した物質を、体内で実際に狙った遺伝子まで届けるためには何らかのデリバリー技術が必要です。

結論から書きますと、現在この運び屋にはウイルス、特にアデノ随伴ウイルス(AAV)が利用されています。

ゲノム編集のために、薬効物質を細胞の中に届けなければなりません。

ウイルスが細胞に感染する仕組みを利用して薬を届けようということです。

ウイルスが感染することによる毒性はないとされています。

しかし、このウイルスに対する抗体ができますので、それが薬効発揮を阻害するリスクがあります。

また、AAVは万能ではなく、筋肉など薬をデリバリーできる場所が限られ、これが創薬の物理的な壁になります。

また、肝臓など比較的薬を取り込みやすい臓器をターゲットに、ウイルスを使わないデリバリー方法も模索されています。

脂肪で、薬効物質を包むといった方法です。

ゲノム編集の問題点。創薬を阻む壁

ゲノム編集技術を使った創薬プロジェクトは着々と進んでいますが、まだまだ課題があります。

代表的な課題は、オフターゲット問題とドラックデリバリーの問題が挙げられます。

オフターゲット問題

オフターゲットとは、標的からそれることで、薬の安全性に直結する問題です。

具体的には、狙った遺伝子配列以外の部分を切断してしまったり、意図せない配列を挿入するリスクがありません。

現在の技術では、これらを完全に制御することができません。

オフターゲットで最も懸念されているのが、がん化のリスクです。

がんは遺伝子に何らかの変異が後天的に起きることで発生しますが、このような現象が引き起こされるリスクがあります。

ドラッグデリバリーの課題

ゲノム編集技術を使った創薬の課題として、狙った組織に薬が届かないというものがあります。

試験管では成功するが、体内では成功しない。

その理由は、体内ですぐに分解されるからです。

それを解決するために、ドラックデリバリーシステムを確立しなければなりません。

上述したようにAAVを使った方法などが研究されています。

課題としては、デリバリーできる部分が現時点で限定的であること。

血流に乗せてウイルスを運ぶため、血液の疾患、血管が張り巡らされた筋肉などはターゲットになりやすいようです。

また、目などは直接注射するという手法も取れるようです。

関連銘柄は?

ゲノム編集により製薬を目指す会社として有名なのは3社です。

Crisper therapeutics (CRSP US)

Editas medicine(EDIT US)

Intellia therapeutics (NTLA US)

この3社はそれぞれCrisper-cas9の上流特許へのアクセスを持ちながら創薬をしています。

いわゆるプラットフォーム会社です。

なぜ特許にアクセスできる会社が3社もあるのでしょうか?

次回の記事で、この3社について少し詳しく分析したいと思います。

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