今回は、Elasticsearchで有名なESTCについて基礎的な情報をまとめます。
ESTCは検索エンジンを提供している会社で、B to Cのグーグルと異なり、B to Bの検索ビジネスに特化した会社です。
同社のサービスは、例えばイーコマースで商品の検索をしたり、ウーバーでドライバーと乗客をマッチングさせることなどに使用されています。
また特徴的な点として、同社のビジネスがオープンソースのビジネスを主体にしていることです。
オープンソースのモデルは、バグの早期発見や機能改善など、ソフトウェアの開発上大きなメリットがあると考えられます。
一方でマネタイズが難しくある程度上手くいっても最終的には買収されて終わるケースが多かったと思います。
一方で同社のような新しいタイプのオープンソースの会社は、ビジネスモデルをしっかりと構築し、マネタイズもしながらサステナブルな成長を目指すとしています。
足元の業績成長もしっかりしており、今後も期待される企業かと思います。

前置きが長くなりましたが、記事の要点です。
- 同社のビジネスモデルの特徴は、オープンソースとプロプラエタリ部分を組み合わせること
- 強みは、並列処理、逆インデックスによる高速な検索能力
- SaaSと、顧客へのクロスセリング、地域拡大で高成長持続
- アマゾンに対抗しライセンス形態を変更
企業概要
同社は、2012年に創業、2018年にIPOした会社で検索に特化した会社です。
足元(2020/12)において、11300以上の顧客を抱えています。
以下の様に、大企業にも多くの顧客を抱えます。
同社のソフトウェアのユーザーはソフトウェア開発者で、例えばウーバーやティンダーのマッチングやイーコマースの検索システム機能の確立のために使われます。

製品について:Elastic Stack
同社のメイン製品はElastic Stackとよばれる機能群です。

検索エンジン部分のElasticsearchに加え、以下の機能で構成されます。
- Kibana:ユーザーインターフェース
- Beats:データジッパー(データ圧縮)
- Logstash:データ取り込み
仕組みとしては、データベースにデータを蓄積し、それを検索によって見える化するものです。
それを4つの機能で実装しています。
さらに、非常に検索が高速であることが特徴です。
高速な理由1:Inverted index
ElasticsearchはInverted indexと呼ばれる技術を使っています。
Indexとは、似たようなデータ群の集まりを指しますが(例えばTwitterのツイート情報など)、Index内に登場するすべてのユニークな単語(例えばCar, Sales)などをさらに登録しています。
ユニークな単語とインデックスを紐づけることで、高速な検索を可能にしているようです。
高速な理由2:並列処理
Elasticsearchでは、IndexをShard(シャード)と呼ばれる断片にわけて細かく保管しています。
それをサーバーのリソースで処理するのですが、新しいリソースが追加されれば、自動的にShardを分配する仕組みになっています。
そのため並列処理が可能になり、高速で処理できるようになっています。
Elastic Stackの課金形態
Elastic Stackはオープンソース部分とクローズド部分(プロプラエタリ)から構成されます。
基本的には無料で使えますが、アラート、セキュリティ、機械学習など有料の機能を使う必要がある場合は、サブスクリプションに加入しなければなりません。
追加で有料機能を使いたい場合、契約を更新するだけで、特にコードの書き換えなどは必要ではありません。


同社にとっては、最初に無料で使ってもらうことで、見込み客を大量かつ低コストで確保できるので、美味しいビジネスモデルかなと思います。
Elastic Stackを使ったソリューションも提供
また同社は、Elastic Stackをベースとして出来合いのソリューションも提供しています。

これらは、非エンジニアがGoogle検索をかけるようなフィーリングで、社内のIT資産や、アプリの稼働状況、セキュリティアラートなどをモニタリングできるソリューションです。

SaaS
顧客は以上の機能をオンプレミス、クラウド(AWS、GCP、Azure)に導入することができます。
加えて、以下のように同社はSaaSも提供しており、非常に利便性が高くなっています。

業績の伸び:レバレッジが大きく効くモデル?
以下同社の売上成長と、調整後営業利益率の推移です。

図のように売上が大きく成長していると同時に営業利益率が改善しています。
これは、同社のLTV/CAC比率の高さに起因していると考えられます。
上でコメントしましたが、同社のビジネスモデルの特徴はオープンソース部分により見込み客をローコストで大量に確保できることです。
この部分に営業をかける必要がないため、CACが低くなると考えられます。

次に競争環境について少し考察します。
Mongo DBと何が違うのか?
同社が取り扱うデータはJSONと呼ばれるもので、MongoDBを使っても似たようなことはできると思います。
ただし、Elasticが検索に強みを持っており、MongoDBはデータ保管部分に強みを持っているという違いがあります。
そのため、両社のどちらかを使うというよりは、両方使うというのが現状のようです。
Amazonとの競合
AmazonはElasticのオープンソース部分を使ってSaaSを提供しているため、競合になります。
Amazonは、Elasticがピュアなオープンソースから離れていっていたため、独自のコミュニティであるOpen distroと呼ばれるコミュニティを設立し、完全な競合となりました。
また直近(2021/1)にElasticサイドはライセンス条項に手を加え、同社のオープンソースを利用したSaaSの提供にさらに制限を加えました(実質使えなくなるとみられる)。

AmazonとしてはOpen distroのコミュニティを育成し、対抗していくしかなくなるとみられます。
報道後、同社のSaaS比率のさらなる上昇期待から、同社の株価は大きく上昇しています。

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