このブログでは、主に成長株を扱っていますが、ターンアラウンドが成功すれば、成長株に回帰する銘柄についても今後扱っていきます。
そこで、今回はGEの分析です。
ターンアラウンドとは、経営上の理由により企業の成長がストップしている状況から脱することを指します。
現在GEは元ダナハーのCEOであったカルプ氏がCEOになり再建が進んでいます。
コロナがどれくらい長引くかによりますが、うまくいけば、航空機部門が成長軌道に回帰、また風力発電を主体とした、環境関連銘柄として物色される可能性もあると想定しています。
本記事では、
- 過去のGEの業績振り返り
- カルプCEOの着任
- 現状と今後の見通し
以上について考察していきます。
GEの苦境

チャートは長期株価チャートです。
GEの苦境については、改めてハイライトする必要もないかもしれません。
リーマンショック後に少し回復しましたが、2017頭から、ボトムまで株価は1/3になりました。
要因としては、業績不振ですが、以下が主な原因と考えています。
- 石炭火力発電の増強(アルストムの買収など)
- IOTプラットフォームへの大型投資ととん挫
事業の本格的な立て直しが必要となったため、GEは2018年10月に外部から新しくCEOを招聘しました。
それがカルプ氏であり、同氏は、元ダナハーのCEOとして、2001年から2014年まで、同社の改善を主導した人物です。
カルプ氏のCEO着任
GEの株価が大幅下落した要因は、業績低迷によりキャッシュが流出し始めたためです。
そのため債務への懸念が高まり、大規模なリストラを行わざるを得なくなる。
またそれにより業績が低迷する。
以上を繰り返す負のスパイラルに陥ってしまったため。
カルプCEOはそれを逆転させる必要がありました。
つまり、
- フリーキャッシュフローをプラスにし、債務不安をなくす
- 業績を上向かせる
という順番で再建を目指していきます(口で言うのは簡単ですが)。
カルプ氏は2018年10月の就任以来、①のフリーキャッシュフローについては、大幅に改善させています。
以下がその実績です。

2017、2018年は、資金が流出していたものの、2019、2020年に関しては大きく純流入となりました。
これはコロナ禍の直撃を考えるとすごいことだと思います。
具体的に同氏が何をしたかというと、トップダウン的にはバイオプロセス事業の売却を行いました。
加えて、同氏やダナハーが得意とするボトムアップの改善活動によりフリーキャッシュフローを改善させています。
同氏が指摘するところによると、GEの従業員は能力は素晴らしいものの、トップの指示が不適格で、それが生かされていなかったようです。
具体的には、数字を上げるためだけを目的に利益率の高い製品を押し売りすることなどです。
例えば、トップがグロスマージンを35%から40%に引き上げることを目標にするとします。
一番手っ取り早いのは、利益率の高い製品の全体に占める割合を上げることです(ミックスシフト)。
数字の達成への圧力により、現場が安易にこのような施策を導入していくことが想像されます。
同氏は、数字ではなく、顧客目線を徹底させ、その後ソリューションをどのようにしたら効率的にデリバリーできるかを現場責任者と一緒になって考えていきました。
従来のGEは強力なトップダウンの中、組織が押さえつけられていたと考えられますが、現在は、ボトムアップで様々な改善アイディアが出てくるようになっているそうです。
GEの現状
GEの現状としては、フリーキャッシュフローが大きく改善したことにより、以前のような債務懸念は無くなりつつあります。
一方で、コロナによるエンドマーケットの停滞により売上の回復は遅れています。

以下、GEの売上構成を見てみます。

上の図は、同社の金融事業を除いたインダストリアル部門の図です。
2021/1に発表されたFY20 Q4の決算のものになります。
各事業と、事業内のEquipment(機器)、Service(サービス)の内訳となっています。
同社は、火力発電部門(Gasとその他)、再生エネルギー、航空、ヘルスケアという4つの部門を抱えています。
ここで指摘できるのは以下です。
- 機器に関しては航空部門、火力その他(図ではPower portfolio)の落ち込みが大きい
- サービス収入はヘルスケアを除くと減収傾向
航空部門の機器では、ボーイングにエンジンを納入しており、コロナの影響が直撃します。
サービスに関しても、コロナの影響で、発電所の臨時メンテナンスが遅れていたり、アップグレード需要が落ち込んでいることが影響しています。
これらの影響は、コロナの収束と共に、なくなっていくことが想定されます。
一方で、火力その他部門の落ち込みは継続すると考えられます。
火力その他部門では、石炭火力や、原子力向けの機器・サービスを展開しているためです。
一方、図にありますように、これらの売上比率は少なくなってきていますので、今後の影響はそこまで大きくないと想定されます。

次に足元の新規受注状況です。

同じく決算説明会の資料です。
新規受注に関しては航空機、火力その他以外は伸びています。
ヘルスケアに関してはマイナスですが、バイオプロセス事業を売却したためで、実質は1%のプラス。

最後に受注残です。

インダストリアル部門のFY20年度の売上は73B程度でした。
一方年末の受注残は386B程度あります。
ウエイトが大きいのは航空機部門です。
航空業界が正常化し、受注をこなすことができれば、売上余地は極めて大きいです。
金融部門は以前と比べてリスクが低下
ここまで、同社のインダストリアル部門を中心に書いてきました。
一方で、同社は悪名高い金融部門も抱えています。

金融部門に関しても新しいCEOの元、上の図のように積極的な債務削減やリストラを行ってきました。
また顧客のための融資など事業シナジーが見込める分野は残し、関係がない金融部門を縮小させています。
そのため、リスクは大きく低下しているというのが市場の見方です。
2020年度はかろうじて黒字確保

2020年度はEPSに関して、本業ベースで59セントの黒字。
そこから、バイオプロセス事業の売却によりプラス。
そこから健全化のための多くのリストラや減損処理し、辛うじて1セントの黒字を確保しています。
2021年度の見通し

会社想定としては、航空機部門が2021年後半に回復してくることを前提に、増収増益を見ています。
またリストラも一巡し、業績回復がEPSに落とし込まれていくと見ているようです。
まだ、本格的な業績拡大フェーズは会社は見込んでいませんが、上向き方向を見ています。
まとめ
GEに関しては、カルプCEOによる改善が定着しつつあり、まだ会社としてまともだった2016年ころの利益が出せれば、PERが10倍ほどと割安な水準になります。※EPSを1ドル、足元株価11ドル
コロナという外部環境の中、自助努力による高いパフォーマンスを上げており、コロナが回復するかどうかにかかってくるものの、航空機部門が戻ってくれば、株価は大きく上昇する可能性が高いように見えます。
そのあと、持続的に成長する会社になるかどうかですが、その可能性も十分に考慮すべきではないかと個人的には考えています。
理由としては、
- ダナハーのような会社になる可能性
- 風力発電部門の業績伸長が予想を超えてくる可能性
などが挙げられます。
カルプCEOはダナハーを現在の強力な会社に育てた中興の祖であり、個人的に注目しています。
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