イルミナ(ILMN)から見た、競合との違いとNGSエコシステム【Illumina株分析】

米国では、2021/1現在、大手証券会社主催のヘルスケアカンファレンスが行われています。

その中で、ILMNによるプレゼンの中で競合との違いやエコシステムについて話されており、非常に参考になりましたので、記事にします。

記事の要点は以下です。

  • ロングリードシーケンサーとショートリードシーケンサーの違い
  • MRDによるがん再発モニタリングでの提携とこの分野での競争優位
  • NGSのエコシステム
Y
Y

それでは順に見ていきます。

目次

ショートリードシーケンサーとロングリードシーケンサーの違い

同社の主力事業のNGSはショートリードシーケンサーと呼ばれています。

これは、ゲノムの配列を読む際、短く、バラバラの断片にして並列で読み取り、情報を再度つなげて元通りに構築するため。

一方ロングリードシーケンサーは、ゲノムをばらばらにせず長いままで読み取ります。

このシーケンサーで有名な会社は上場企業であるPacBioや非上場企業のOxford nanoporeです。

以下、一般的に言われている両者の違いについて簡単にコメントします。

ショートリードシーケンサーのメリットとデメリット

メリットとしては、並列処理で高速、安価、短い配列なら非常に正確。

一方で、断片よりも長い繰り返し領域がある場合など、ロングリード化は難しい場合があるそうです。

ロングリードシーケンサーのメリットデメリット

メリットは長いままで読み取ることができることです。

デメリットは現時点では、同じ長さだと正確性がやや劣り、ランニングコストが高いことです。

Y
Y

もし、高速かつ正確、低コストでロングリードのまま読めればそれが最高だと思います。

同社が考えるロングリードシーケンサーに対する優位性

一方で、ショートリードシーケンサートップである同社は、現時点でどのようにかんがえているのでしょうか。

今回のプレゼンにおいて、同社はショートリードシーケンサーのロングリードシーケンサーについて、以下のように語っています。

Our thoughts on long read haven’t really changed in the sense that, as we said a few years ago, we believe long-read technologies complement short-read technologies that they serve about 5% of the market where you’re doing de novo sequencing for new species, for example. So there are a number of segments where that technology is well suited. And for the vast majority of the market, the 95% of the market, short reads are just simply the better technology in terms of accuracy, in terms of price performance. The price gap can be 10x between what you can do in short reads and what you can do in long reads. The raw accuracy is it’s higher on short reads.

And in big markets for us, so for example, in NIPT, the fragments you’re reading are 130 base pairs long. So being able to read 10,000 base pairs really doesn’t matter. Same thing with liquid biopsy. You’re looking at fragments that are under 200 base pairs long. So you’re not willing to make a trade-off in accuracy or cost just to be able to read 10,000 base pairs. So we continue to believe there’s a complementary part of the market that long read serves well. And for the majority of — the vast majority of the market, short reads are — especially SBS, is really, really well suited for.

会社プレゼンより

以下要点をまとめます。

ロングリードは市場の5%程度に過ぎない

ロングリードにはニーズがありますが、市場規模の5%程度であるとしています。

その中で使用されているのは新種のゲノム配列を調べることなど。

ショートリードは既知の遺伝子配列情報を利用することができるので、アルゴリズムに組み込むことで、ロングリード化も可能なケースがあると思いますが、全く未知の新種であれば、ロングリードシーケンサーで調べないと厳しいということでしょう。

95%のケースでは、シンプルにショートリードシーケンサーが優位

シンプルに正確性、コストの観点で優位なテクノロジーであるとしています。

とくにコストはゲノムあたり10倍違うとのこと。

NIPTやリキッドバイオプシーでロングリードを読む必要はない。

上のコメントによると、NIPT(出生前診断)では130ベースペア、リキッドバイオプシーでは200ベースペア程度で大丈夫で、10000ペアを読めるような機能は必要ない。

そのため、上記のような診断分野では、正確性やコスト優位性が際立つとの印象です。

Y
Y

次に、今回発表があったMRDによるがん再帰モニタリングについてです。

MRDとは

MRDとは、がんの治療後に残存するがん細胞のことです。

これをモニタリングすることで、がんの再発を調べることができるということです。

がん情報サイト「オンコロ」
微小残存病変(MRD) | がん情報サイト「オンコロ」
微小残存病変(MRD) | がん情報サイト「オンコロ」微小残存病変(MRD:minimal residual disease)とは、抗がん剤の投与や根治切除手術により、一定の効果が確認された後でも、患者さんの体内にまだ残っているだろうと想定...

今回同社のGRAILがMRDによるがんのモニタリング手法確立のため、以下のように提携を発表しています。

この分野でNTRA(Natera)とどう違うのか?

同じく遊離DNAをターゲットにしたMRD診断方法確立を狙っているNTRAとの違いとして、ILMNは以下のようにコメントしています。

GRAIL’s approach is slightly different. So with their targeted methylation approach, they won’t need patients to do a tissue sample first and create a custom assay for each patient. So GRAIL’s approach is more of just a blood test looking for any types of cancer in the blood.

同社プレゼンより

NTRAの方法は、患者さんから最初に組織を取らないといけません。

その後、その患者さんにカスタマイズされた解析をそれぞれセットアップする必要があります。

同社のメチレーションをターゲットにしたやり方であれば、それらは必要ではなく、シンプルに血液を1滴使うだけで良いということのようです。

最後にNGSのエコシステムについて確認

最後にNGSのエコシステムの確認のために非常に有用なスライドが今回のプレゼンでありましたので、以下に乗せておきます。

同社プレゼンより

キーワードとしては、マルチオミックスというものがあります。

マルチオミックスとは、ゲノムから始まり、それが転写され、タンパク質になる。この一連の流れにすべて関わってくるということですね。

すでに記事にした企業もありますので、よろしければ、ご確認ください。

10x Genomics(TXG)株をわかりやすく分析【10x ゲノミクス】

ツイストバイオサイエンス(TWST)株をわかりやすく分析【TWIST BIOSCIENCES】

↓応援して頂けると嬉しいです

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

コメント

コメントする

目次
閉じる